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対人業務強化戦略④~オンライン服薬指導を活用する!

2022.11.28

薬局での対人業務を強化するために役立つ情報を5回にわたってご紹介します。


今日のテーマは、対人業務強化戦略④「オンライン服薬指導を活用する!」についての話題を取り上げます。

 

👆このコラム内容について

オンライン服薬指導が、薬局経営へ与えるインパクトがわかるようになります。

また、薬局近未来ビジネスモデルを知りたい方にもオススメです。

 

(1)オンライン服薬指導の関連事項

 

薬局を取り巻く環境は、20224月のオンライン服薬指導の診療報酬改定を筆頭に、20229月末よりテレワーク薬剤師の解禁、20231月より電子処方箋導入予定など大きく変わってきています。

 

1)オンライン服薬指導の診療報酬や規制

 

 

オンライン服薬指導(過去)

0410対応

現在のオンライン服薬指導
2022年4月より)

診療報酬

1回43
月1回まで
加算算定不可
オンラインは1割以下

外来の処方箋と同様
(服薬管理指導料、加算算定、月何回でも可能、算定割合に制限なし)

実施方法

初回はオンラインNG
オンラインと対面を組み合わせて実施

初回から薬剤師の判断によりオンラインの実施が可能

通信方法

映像及び音声による対応
(音声のみ不可)

電話(音声のみ)でも可

映像及び音声による対応
(音声のみ不可)

処方箋

オンライン診療又は訪問診療を行った際に交付の処方箋

どの診療の処方箋でも可

薬剤の種類

今まで処方されていた薬剤

原則として全ての薬剤

調剤の取扱

処方箋原本に基づく調剤

医療機関からFAX等で 送付された処方箋情報により 調剤可能。但し、後日、処方箋原本を郵送・持参

出典:厚生労働省の診療報酬改定を元に、著者作成

 

👆薬局経営のワンポイント

2022年の診療報酬改定よりオンライン服薬指導の条件が緩和され、処方箋単価が対面の服薬指導と同等(在宅など一部除く)に評価されるようになりました。

事実上、診療報酬上でオンライン服薬指導が市民権を得たことになります。

オンライン服薬指導が行いやすい法整備も進んできており、2022年はオンライン服薬指導元年となります。薬局としては、この機会にオンライン服薬指導にどう向き合っていくべきかをしっかり考えておく必要があります。

但し、どうやって処方箋枚数を増やすか、処方箋単価を高めるかを考えることが目的であり、オンライン服薬指導を手段として位置付けてご検討ください。よくある事例は、既存患者様をオンライン服薬指導に変えることだけで満足している場合があり、システム業者にお金を払うことだけになりますから、利益はマイナスです。

オンライン服薬指導は手段として、新規患者様の獲得、または既存患者様の遠方医療機関処方箋獲得を目的に戦略を練ってみてください。

 

 

 

2)テレワーク薬剤師

厚生労働省は930日、医薬品医療機器等法施行規則を改正し、薬剤師の自宅など薬局外でオンライン服薬指導を行うことを可能となりました。

 

著者作成

著者作成

 

薬剤師がテレワークを行う条件は、以下の2点に留意する必要があります。

①薬局で調剤を行う人を1人以上配置して相互に連絡が取れること

②薬局が開局している時間帯に限定して実施すること 

オンライン服薬指導を活用して、薬剤師の働き方改革の推進ができるようにされた内容になっています。

この制度をうまく活用できれば、薬剤師採用や離職率低下につながる人事戦略となり得ます。

 

👆薬局経営のワンポイント(テレワーク薬剤師導入のメリット、注意事項)

①    テレワークの提案ができれば、薬剤師の離職率を低減させられる可能性があります。例えば、子育て中のママさんの中には、時間帯を絞って自宅で仕事をしたい方がいます。

②    立地が理由で薬剤師採用に苦戦している薬局が、テレワーク薬剤師の募集をすることで、採用がしやすくなる可能性があります。

③    テレワーク薬剤師は、調剤業務をしないことになりますので、薬局に在室しているスタッフとの連携や社員研修の強化が必要です。

 

 

3)電子処方箋20231月スタート

電子処方箋がスタートすると、患者様⇄医療機関、患者様⇄薬局、医療機関⇄薬局の関係全てが電子情報のみで伝達可能となります。また、あまり知られていませんが、処方医が電子処方箋を登録する時に、併用禁忌や重複投与のアラートが出る仕組みになっているため、処方ミスを減少させるシステムとなっています。電子処方箋になると、情報をつなぐ仕組みだけでなく、情報の質も向上するシステムです。鋭い方はお気づきかもしれませんが、今の薬剤師の重要な業務である処方ミスチェックの役割が減少することにも繋がると思われます。

 

著者作成

 

(2)オンライン服薬指導を含めた薬局の近未来

先ほどのモデルに、現在検討されている調剤の外部委託が導入された場合を追加した図を作りました。

この図のような未来は、5年以内にはやってくるでしょう。今は、立地依存型のビジネスモデルですが、未来の薬局は、どの領域で勝負する時代になるのでしょうか。

私は、処方医が患者様から対人業務で選ばれるように、薬局も対人業務で選ばれる時代がやってくると考えています。結果として薬局は、在籍する薬剤師の●●さんの人気によって処方箋枚数が変わってくるのではないでしょうか。

 

著者作成

 

なお、コンサルティング先の薬局経営者から、ITが苦手な高齢者がメインターゲットだから、オンライン服薬指導は広がらないのではないかと言われたこともあります。確かにその経営者が仰ることも一理ありますが、近未来を考えると、下図のようになると思っています。

 

出典)厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/000871255.pdfを著者が加工

 

処方箋を持ってきてくれる高齢者は、ITリテラシーが低くオンライン服薬指導は進みにくいと言われてきましたが、これから10年〜15年後には、現役時代にPCを使ってきた世代が高齢者になり、今の高齢者は、ITリテラシーのある子供家族世代の介護を受けることになります。

近未来の患者様は、ITリテラシーがそこまで低くない人が中心となり、薬局DXが一気に進んでいくものと思われます。

 

👆薬局経営のワンポイント

厚生労働省の方針を紐解いていくと、「対人業務」の中で特に、服薬アドヒアランス強化が薬局薬剤師に求められていると思います。服薬アドヒアランス強化とは、丁寧に説明することはもちろん、患者様個々のニーズを的確にキャッチして、患者様に納得いただくことも含みます。

「対面服薬指導」と「オンライン服薬指導」のどちらでも服薬アドヒアランス強化は、コアとなる能力です。但し、オンライン服薬指導では、画面越しの会話になるため、伝わりにくいことも出てきますので、対面服薬指導プラスαの訓練もしていくことが必要であると思います。

 

今日は「オンライン服薬指導」をテーマとしながら、薬局の近未来について書かせて頂きました。

この機会に是非「オンライン服薬指導」について社内で議論してみてください。

 

弊社では、薬局の経営戦略や運営のお手伝いなど薬局経営サポートを行っています。

コンサルティング関連のご質問などがございましたら、無料相談を承っていますので、気軽にご連絡頂ければ幸いです。

 

著者紹介

鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役

2004年城西大学薬学部卒業。2017年グロービス経営大学院経営研究科(MBA)卒。

学校法人医学アカデミー薬学ゼミナールにて講師・商品開発・組織開発・マネジメント業務に従事。大手薬局、地域薬局、スタートアップ薬局にて薬剤師業務を経験。

現在、有限会社クラヤ代表取締役。薬局向け経営コンサルティング(クラヤコンサルティング)、人事評価システムの導入、処方箋単価向上、店舗開発、有料職業紹介業等のサービスを展開。

 

YouTubeチャンネル(薬剤師そほうの薬局経営塾)