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加算パワーアップ「居宅療養管理指導料の算定ルール(前編)」
2023.10.03
前回から4回にわたり薬局の加算パワーアップシリーズについてコラムを書いております。
②加算パワーアップ「居宅療養管理指導の算定ルール(前編)」
③加算パワーアップ「居宅療養管理指導の算定ルール(後編)」
④加算パワーアップ「在宅回りの加算」
前コラムで薬局経営に大きなインパクトがあること地域支援体制加算に在宅医療(訪問調剤)が24件以上必要であることを述べました。今回は、地域支援体制加算以外の観点でも在宅医療(訪問調剤)が薬局経営で益々大切になる外部環境についても理解を深めておきましょう。さらに、大切とわかっていてもどのようにはじめれば良いか困っている方に、お役に立てるようにコラムをまとめました。すでに、在宅医療をされている方も、内容に抜け漏れがないかチェックしてみてください。
加算パワーアップ「居宅療養管理指導料の算定ルール(前編)」では、薬局経営での在宅必要性、医療保険と介護保険の概略について説明します。
【目次】
コラム内容について 訪問調剤のニーズ高まりについてと、はじめて居宅療養管理指導料を取る時の流れがわかります。 |
1.在宅医療(訪問調剤)と薬局経営
医療業界全体から薬局業界の経営環境を考えてみます。
まず、医師の働き方改革が2024年4月よりスタートします。
出典:厚生労働省 医師の働き方改革概要 - 読み取り専用 (mhlw.go.jp)
上図は、厚生労働省が示している医師の時間外労働(残業)についての取り決めです。医療機関A(上図参照)であれば、年間960時間が上限になってきます。月換算すると80時間上限設定です。かなり労働環境が変化することが予想されます。その一方で国の責任は、患者さんに質の高い医療をしなければならないことは変わりありませんから、医師の業務はタスクシフト/シェアや医療DXを推進される流れとなっています。
具体的には、2023年6月発表の骨太の方針の一部に『医療専門職のタスクシフト/シェア、薬局薬剤師の対人業務の充実、対物業務の効率化』が明記されています。在宅医療の具体例には、医療専門職間のタスクシフト/シェアにおいて、『在宅医療における円滑な薬物治療の提供』が掲げられており、薬局は夜間休日を含む24時間対応が可能な体制を強化することも打ち出されています。
つまり『医師の働き方改革→在宅医療でも薬局に求められることが増える』流れとなっています。
さらに、医師の働き方改革でニーズが増えるだけはなく、そもそも在宅医療を受ける患者さんも増加します。
出典:国立社会保障・人口問題研究所ホームページ (https://www.ipss.go.jp/)
在宅医療を受ける人の大多数は、要支援・要介護者です。85歳以上になると要支援・要介護になる人の割合が50%を超えます。上図から85歳以上の人口ピラミッドだけを抽出して比較してみます。
すなわち在宅医療を受ける人が人口ピラミッドを見ても明らかに増えて来ますので、薬局も訪問調剤を多く担当することになります。
2.医療保険と介護保険
薬局が訪問調剤を行うためには、医療保険だけでなく介護保険についても知っておく必要があります。
訪問調剤では、医師からの指示が必要になりますが、その時の患者さんの置かれている環境によって点数が変わってきます。
■基本ルール
医師から訪問調剤の指示がされていない場合は、勝手に薬局が患者さん宅へ配送をしたとみなされ、外来と同様の扱いになりますから、必ず医師からは必要な患者であれば訪問調剤の指示をもらわないと勿体ないです。概算では、訪問調剤1回の処方箋は、外来処方箋の3倍程度利益を生むことイメージで考えていただくと良いかと思います。なお、訪問調剤は、医師や薬剤師が配置されている施設では、訪問調剤に関わる加算が取れないのが原則ですのでご注意ください。
|
介護老人保健施設 |
特別養護老人ホーム |
養護老人ホーム |
軽費老人ホーム (ケアハウス) |
配置基準 |
医師〇 薬剤師〇 |
医師〇 薬剤師× |
医師〇 薬剤師× |
医師× 薬剤師× |
在宅患者訪問薬剤管理指導(医療保険) |
× |
× (一部〇) |
× |
〇 (50人以上の施設は医師配置のため×) |
居宅療養管理指導料(介護保険) |
× |
× |
〇 |
〇 |
|
有料老人ホーム |
サービス付き高齢者住宅 |
認知症対応型共同生活介護 (グループホーム) |
|
配置基準 |
医師× 薬剤師× |
医師× 薬剤師× |
医師× 薬剤師× |
|
在宅患者訪問薬剤管理指導料(医療保険) |
〇 |
〇 |
〇 |
|
居宅療養管理指導料(介護保険) |
〇 |
〇 |
〇 |
|
ポイント(在宅患者訪問薬剤料または、居宅療養管理指導料が取れる施設) 施設に医師や薬剤師の配置がされていない施設は算定が可能です。 |
「居宅療養管理指導の算定ルール(前編)」は以上でございます。次回アップ予定の加算パワーアップ「居宅療養管理指導の算定ルール(後編)」では、具体的な段取りをご紹介します。是非ご覧ください。
著者紹介
鈴木 素邦 有限会社クラヤ代表取締役
薬学部卒業と同時に薬剤師免許取得。新卒で薬剤師国家試験予備校に講師として就職。講師業は年間100日以上、15年間で9000時間以上登壇。15年間受講者満足度は常に上位。短時間で最大限の情報を講義内容と話し方に評価を受け、東京大学など全国32大学への出張講義。武田薬品工業(株)、ファイザー(株)等大手製薬企業20社以上のMR研修講師へと幅を広げた。
27歳で管理職に昇進。自身の価値観を部下に押し付け、10人中5人の部下が退職や異動希望が出る状態になりどん底を味わうが、社内から顧客満足度を上げる伝え方を聞かれることが多くなり、人を動かすトークメソッド「ストーリーライン」を体系化。
薬剤師合格率(20部署中)1位を予備校始まって以来初の3年連続達成。学長賞(準MVP)を2回受賞、その他社内表彰多数受賞。20部署中6部署統括や、バックグラウンドの異なる200名を動かすプロジェクトマネージャーも担当するが、「ストーリーライン」を活用し、全国のメンバーのまとめ上げにも成功。薬剤師の輩出数は、3万人を超える。
今までのやり方が通用しなくなってきている薬局業界を「ストーリーライン」を通じて、処方箋単価向上、処方箋枚数の増加、オンライン時代に向けた薬局の変革。好評となり、徐々に注目され、「薬局コンサル」でホームページ検索すると、上場コンサルティング会社(船井総研)と同様に1ページ目に出てくる知名度の会社となっている。
YouTubeチャンネル(薬剤師そほうの薬局経営塾)
https://www.youtube.com/channel/UC_c5_QbVmChYgZ3VxsCI84w/featured