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通所介護(デイサービス)の生き残り戦略①

2021.12.06

通所介護(デイサービス)の生き残り戦略①

株式会社スターパートナーズ 代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム 代表理事
脳梗塞リハビリステーション 代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤 直路

 

                        • 通所介護(デイサービス)の現在

                        通所介護(デイサービス)を巡る状況は、年々厳しさを増しています。平成27年改定での基本報酬減算、平成30年改定ではサービス提供時間の細分化や大規模事業所の減算、直近の令和3年改定では個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱや入浴介助加算の実質的な切り下げなど、報酬そのものは減算傾向が続いています。

                        厚生労働省の「令和2年度 介護給付費等実態統計の概況」によると、通所介護(デイサービス)事業所数も2016(平成28)年をピークに減少に転じるなど、成長を続けてきた環境から変化してきています。

                        その一方で、各種加算の要件緩和や、新規加算の創設など、今後、国が誘導していきたい方向性についても明らかになってきています。特に、自立支援については、身体機能の維持・改善という観点から近年注目を集め、微々たる報酬ではありますが、ADL維持等加算という、成果(アウトカム)を評価するタイプの加算も創設されています。

                        通所介護(デイサービス)は、いま、大きな転換期を迎えているといえます。「社会保障の持続性」という目的のもと、基本報酬が以前の様な形に戻るということは、ほとんど考えることのできない状況になりました。その一方で、「重度化予防」や「認知症・中重度者の在宅生活継続」といった考えのもとに進められている大きな方針に従えば、一定の評価を得て、報酬も上乗せしていけるという状況にあります。今後、生き残っていくには、こういった方向性を見誤らずに通所介護(デイサービス)の運営をおこない、かつ、それを効果的にPR・集客・利用者のマネジメントをおこなっていくことが重要です。本コラムでは法改正動向等の時代の流れを背景に、通所介護(デイサービス)で今後おこなっていきたい取り組みについて解説をしていきます。

                        • 通所介護(デイサービス)の特長の棚卸

                        今後の生き残りを図っていく上で、通所介護(デイサービス)に求められる事とは何かを抑えておくことは重要です。通所介護(デイサービス)の役割を表現する上でよく引用されるのは「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第92条」における、「指定居宅サービスに該当する通所介護の事業は、要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じた自立した日常生活を営むことができるよう、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立間の解消及び心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図る」という文言です。

                        「社会的孤立の解消」「心身機能の維持」「家族の負担軽減(レスパイト)」といった要素が基本的な機能とされ、近年ではそれに加え「認知症ケア」「中重度ケア」「機能改善」「栄養改善」等の機能もまた、加算などで評価されるようになってきています。法改正によって経営が左右され、かつ競争が激化している通所介護(デイサービス)事業においては、これら求められる本質的な機能をまずは確立し柱に据えながら、体制や実施プログラムで他社との差別化を図っていくことが重要です。

                        例えば「機能訓練」を打ち出していく場合、実際の成果を出すためにどの様な工夫ができているか、専門職はいるのか、モニタリングは機能しているか、何割の利用者が維持・改善できているのかといった視点が必要になります。

                        「レスパイト」と「認知症ケア」が強みだと考えるなら、認知症介護実践者研修等の修了者がどの程度配置されているか、加算を算定しているか、学習療法や回想療法などの専門プログラムを取り入れているかなど、どれだけ専門性を担保できているかを確認しましょう。

                        加算の算定率の低い「栄養アセスメント加算」や「栄養改善加算」などは算定しているだけで差別化になりますし、心身機能の維持という面でも「機能訓練」の機能との連携が期待できるので、これらを同時算定できていれば更なる強みになります。

                        この様に、通所介護(デイサービス)に求められる機能や加算の意義については、表面的なものだけでなく、その実施内容や具体的成果を示すことができれば、それは他施設との差別化になります。反対に、そういった特長のない施設や、法改正の流れに逆行した施設にとっては、より厳しい時代がやってくることが予想されます。まずは、何が自施設にとって長所か、それをより確固としたものにするにはどうすれば良いかを考えていくことが必要です。

                        • ツール作成のポイント①チラシの作り方

                        通所介護(デイサービス)の本質的な機能をまずは確立し、それを柱に据えながら、体制や実施プログラムで他社との差別化を図っていくことを決めた後には、今度はそれらを多くの方に伝えることが大切になります。そのためには、地域の専門職や要介護者の方に向けて、自施設の取り組みをPRするようなツールを整備していくことになります。

                        通所介護(デイサービス)の認知度を向上させていく上で、ケアマネジャー等に配布するツールとして主要なものは「①チラシ」「②アプローチブック(後述)」があげられます。

                        1つ目の「チラシ」は、通所介護(デイサービス)の特長を簡易的にまとめたツールです。「空き情報」や「イベント情報」などを作成し、ケアマネジャーへ定期的に配布されている事業所様も多いのではないでしょうか。定期的に配布する資料だからこそ、自社がどんなサービスを提供しているかを常に伝え、何か新しい取り組みがはじまればそれを伝えるためのツールとして役に立ちます。

                        例えば、以下の様な内容は、是非、盛り込んでいただきたいです。

                        <メインターゲット>

                        「身体機能を維持・改善したい方向け」

                        「要介護度が低めの、アクティブな方の多いデイです」

                        「中重度・認知症の方でも安心してお過ごしいただけます」

                        <強みとその根拠>

                        「一人ひとりに合った機能訓練プログラムを提供!理学療法士と作業療法士が在籍しリハビリ機器も充実!」

                        「管理栄養士が利用者様一人ひとりの栄養状態をサポート!食事の面からも生活を支援!」

                        「生き生きと過ごせる通所介護(デイサービス)!フィットネスや料理教室など、50を超えるプログラムから好きなものを選択!」

                        「リフト車・特浴完備」「手厚い人員配置」「認知症介護実践者研修の修了者配置!」

                        ※上記の根拠について、実際の配置や利用者様の変化、成果についてはできるだけ数値で表現するようにするとなお良いです。

                        <報告事項>

                        「新しく●●さんが加わりました!●●という経歴を持っていて●●が得意です!」

                        「新プログラムを開始しました!」「●月●日に▲▲のイベントを実施しました!」

                        定期的に配布するものだからこそ、伝えたい情報は繰り返し伝え、しかしマンネリにならないよう、新しい情報も更新していくことが重要です。これらの基本情報に加え、最新のデイや職員の様子など、生き生きとした写真も取り入れていくとより良いでしょう。




                        • ツール作成のポイント②アプローチブックの作り方

                        定期的に配布するチラシに加えて是非作成していただきたいツール、「アプローチブック」についても解説させていただきます。

                        「アプローチブック」は、通所介護(デイサービス)の利用を検討する上で抑えておくべきポイントを一通りまとめたツールです。「チラシ」が、定期的な配布により事業所の認知度やコンセプトの浸透を図るツールであることに対して、「アプローチブック」は興味を持った方の体験利用や契約を促す“クローザー”の役割を持ちます。

                        高齢者やご家族に施設を紹介する際、常に施設の職員、それもコンセプトを理解した管理者や生活相談員がプレゼンテーションをおこなうのがベストですが、一番初めに高齢者やご家族と施設を結びつけるのは担当のケアマネジャーになります。多くの場合、他社の人間となるケアマネジャーですが、そのケアマネジャーが通所介護(デイサービス)を高齢者やご家族に紹介するその時点で、できる限り自社のコンセプトや魅力を伝え、体験へと促す仕組みが重要になります。それを実現するために、誰が施設の説明をおこなっても、1ページ目から順を追って話すことで、伝えたいことを伝えきれることを目的としたツールが「アプローチブック」なのです。

                        「アプローチブック」の構成にもポイントがあります。

                         

                        <①一言で表現するコンセプト>

                         

                        表紙や、表紙をめくったページには、まず一言でデイのコンセプトを表現しましょう。「誰のための」「どんな通所介護(デイサービス)か」を表現することで、高齢者やご家族に「自分たちのための施設なのだな」と、興味を持っていただきます。これは「チラシ」での表現をもとに作りましょう。

                         

                        <②デイのこだわり・特長>

                         

                        ①のコンセプトを実現するための具体的取り組みや根拠を、できれば5つ以上、具体的に、写真を交えながら解説します。

                         

                        <③ご利用者の声>

                        ①や②で解説したことがらを「実際に利用されている方に好評を得ている=自分が行っても満足できる」と、ご本人やご家族自身に追体験していただきます。可能であるならば、ご利用者様の写真や、直筆のアンケートなど、生の声であることが伝わる要素が入るとより効果的です。

                        <④利用料金>

                         

                        要介護度別の利用料金や算定可能な加算、自費の明細を明記します。料金の提示は、サービスの内容を十分に提示し、利用意欲が高まった時点で伝えるのが効果的です。また、1~3割負担の具体的な利用イメージが伝わるよう、空欄のある試算用の式などもあると良いでしょう。

                         

                        <⑤体験利用の案内(次の行動の提示)>

                         

                        最後には必ず「一度、体験してみませんか?」という、お勧めの一言が必要です。体験利用の条件などをまとめ、その場で決断いただける仕組みを組み込みましょう。他にも、1日の流れやスタッフ紹介など、より具体的なイメージを伝えるコンテンツも有効です。

                        自社の魅力を伝えるアプローチブック、まだ整備されていなかったら、是非、まとめてみてください。