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通所介護(デイサービス)の生き残り戦略②

2021.12.07

通所介護(デイサービス)の生き残り戦略②

株式会社スターパートナーズ 代表取締役
一般社団法人介護経営フォーラム 代表理事
脳梗塞リハビリステーション 代表
MPH(公衆衛生学修士)
齋藤 直路

 

                          • 営業の心得

                          前回まではどの様に通所介護(デイサービス)のコンセプトを整え、そしてそれを伝えるためのツールを作れば良いかについて解説してきました。今回は、それらの情報をご利用いただく方へ、どの様に伝えれば良いかをお伝えできればと思います。

                          通所介護(デイサービス)を含め、介護保険事業は基本的にケアプランに基づいてご利用者に提供されることはご存知の通りです。そのため、自社の介護事業を地域で知っていただくためには、まず地域のケアマネジャーへの営業をおこないます。この際に、前述した「チラシ」や「アプローチブック」を活用していくのですが、ただ訪問し「紹介してください」と伝えるだけで良いわけではありません。訪問するときには、もちろん定期的に顔を出してコミュニケーションを取ると同時に、前回よりも何かしらを深める・前進させるという目標設定が必要です。

                          例えば、以下の様なものが想定されます。

                          <①同じ事業所で面識のないケアマネジャーの情報を取得する>

                           

                          全てのケアマネジャーと挨拶が済んでいなければ、顔見知りの方に紹介していただいたり、不在でも、お名前をお伺いして後日電話で挨拶することもできます。「名前の把握⇒顔の一致⇒挨拶⇒コミュニケーション」と関係性を発展させ、またそういうケアマネジャーの数を1人1人確実に増やしていくことが重要です。

                          <②来所したことのないケアマネジャーに来所いただく>

                          ご利用者を紹介いただく上で重要なのは、ケアマネジャーが自社について(または担当者について)信頼を寄せていただいているということです。また、コミュニケーションはもちろんのこと、実際に施設に足を運んでいただくことも重要です。イベントやランチの試食会、または特に用事がなくてもかまいません。「お越しになったことって、ありましたか?もしなかったら、是非一度見学にいらしてください」。その一言をかけてみましょう。

                          <③ご利用者の情報共有>

                          順調にコミュニケーションを積み上げ、紹介をいただいたとしても、重要なのはさらにその先です。ご利用者の情報共有をしっかり行い、何か気づいたことがあれば、先回りして提案するようにしましょう(「入浴目的のご利用者が連休の関係で利用時期に開きが出てしまう場合、通常使わない曜日であっても連休の前後の追加利用を勧める」等)。適切な情報提供は信頼関係につながるとともに、自社の稼働率コントロールにも重要になってきます。定期的な連絡を通じたコミュニケーションは、信頼感アップにつながるでしょう。

                          「●●が得意なあのデイに連絡してみよう」という認識を、地域の全ケアマネジャーに持ってもらうことが最終的な目標です。そのためには、コンセプトの策定と、その認知、そして何よりもケアマネジャーと信頼関係を築くことが重要です。

                          • 本質を突き詰めることの重要性

                          ここまでは自施設の強みをどの様に伝えるかについて主に解説してきました。しかし、こちらのコラムをご覧の皆様は既に感じられていることかもしれませんが、こういったテクニックはいわば「手段」であり「本質」ではありません。時代や利用者、ご家族、ケアマネジャーに求められるサービスを実施し、その期待に応えることこそが介護事業所の「本質」です。在宅生活の継続や要介護度の維持・改善といった目的がそれにあたります。

                          例えば、これまで本コラムでもお伝えしている自立支援や認知症ケア、栄養・口腔などを突き詰めていくことで、「本質」に迫っていくことになります。具体的に要介護度の維持・改善を通じた「自立支援」をおこなっている通所介護(デイサービス)の取り組みを例に挙げながら、その「本質」に迫っていきたいと思います。

                          まず「自立支援」が改めて注目されている背景について確認したいと思います。現在、介護保険サービスは、サービス提供量を増やし、社会資源として足りない部分を補ってきた時代から、質を追求し、成果を出している事業所に対してインセンティブを出す方向に舵を切っています。また今後この方向性は今後も続くものと考えられます。例えば、医療においても、在院日数を少しでも短くし、その中でどれだけできることを増やすかに焦点が当てられ、入院医療を少しでも短く、在宅医療を充実させる方向になっています。

                          つまり、これまで入院医療で行っていたことを在宅医療や在宅介護の中でいかに提供できるかがポイントとなってきています。近年の介護報酬改定においても、通所介護(デイサービス)における「ADL維持等加算」など、介護サービスの成果をみる仕組みが導入・強化されたことからその流れが読み取れます。

                          これまで、介護サービスでは要介護者の身体機能や生活機能への介入について評価する加算は作られてきましたが、成果を見るような取り組みはなされていませんでした。そこに新しく、「ドナベディアン・モデル」で言えば、ストラクチャーの指標とアウトカムの指標が導入され、「誰がどのように提供しているか」と「その結果どうなっているか」を質の評価の指標とされるようになりました。つまり、サービス提供の体制の構築と、その結果の成果が求められるようになったといえます。

                          しかし、成果を出すということについて、医療機関のように専門職が重点的に配置されていない介護事業所では、戸惑いを感じられることも多いと思います。そういった事業所では、しっかりと手順を踏んで、自立支援のための体制を構築していかなければなりません。

                          • 計測(モニタリング)の重要性

                          自立支援体制の構築に必要な要素とそのポイントは、PDCAを回せる体制を整えるということになります。介護度の維持・改善を通じて自立支援を目指す事業所は、以下の様な要素が必要になります。

                          ・定期測定をしているか

                          ・その指標は対象者の機能訓練などの成果を見るのに適しているか

                          ・成果が出た(出なかった)理由を確認し、周知しているか

                          ・成果が出た(出なかった)方法をアップデートしているか

                          対象者が維持・改善できているかどうかは測定しなければわかりません。しっかりとした検証をおこなうためには、成果を確認する上で定期測定は必須です。また、定期測定を実施している場合はその測定項目の確認が必要です。事業所で目指す方向性に合致した測定項目を選択することが重要になります。

                          介護報酬においても、令和3年4月の改正で「科学的介護推進体制加算」が創設され、基本となる項目が整理されました。例えば、介護度の維持・改善の場合、バーセルインデックスがこれに当たります。介護度とADLを結びつける指標になり、特に課題となる生活動作について確認し、それに対する介入を検討する材料となります。また、栄養状態についても基準が示されましたが、指標として最もおすすめしているのが、MNA-SFという指標です。これは血液データなどを使用せずに、介護サービスでも栄養状態が客観的にわかる指標です。

                          重要なのはこれらの指標を使用することで「低栄養のリスクがある⇒栄養改善のプランを検討する必要がある」という、より専門的な情報を伝えることができるようになることです。それらを共有し、対策を立てることでより良い介護をおこなうとともに、組織としての経験値を蓄積していくことになります。このような指標を栄養状態の他に、認知機能や運動機能、口腔機能など様々な測定をすることでより専門的なフィードバックを行えるようになります。

                          例えば認知症の方の受け入れを積極的におこなっている通所介護(デイサービス)なら認知機能の評価をおこなうことも考えられます。また、活動と参加に力点を置く事業所なら、利用者のプログラムごとの参加数なども把握し、より自主的な活動を促せるようPDCAを回していくことが重要になります。

                          介護度の維持・改善を例に挙げましたが、重要なのは事業所の機能に合わせた指標をきちんと計測しながら、介入と観察を繰り返し、自事業所のケアの質をより高めていくことにあるといえるでしょう。

                          • 測定結果の活用方法

                          では、測定結果を利用しながらPDCAを実際に回してくためにはどうすれば良いのか、その方法について解説します。測定結果の利用の仕方は大きく2種類あります。

                          ①ご利用者様個人の測定結果を確認する

                          ②事業所全体での測定結果を分析する

                           

                          前者は、ご利用者様お一人おひとりの状態やその変化の確認をおこなうために活用します。ご利用者や関係者間での情報共有を、データでの報告という形でおこないます。こうすることで、ご利用者様やご家族の意向を確認するとともに、各職種による専門的なフィードバックを得て、それを実行に移していきます。後者は、事業所全体のご利用者様の経過をまとめることで、事業所のおこなっているサービスそのものに着目します。

                          この測定結果をもとに進めていきたいのはサービス内容の再構築です。自分たちの目指す介護をおこなっていく上で、きちんと出したい成果を出せているか、出せていないとしたら何が原因なのかを、全体的な推移から解き明かしていきます。

                          例えば、通所介護(デイサービス)で導入された「ADL維持等加算」に関して、バーセルインデックスを使用して出た値だけを追って、これが低下した理由を考えてもなかなかわかりませんが、同時に様々な測定をしていれば何が原因でADLのレベルが下がったのかがわかります。具体的にあった事例としては、認知機能の計測を同時におこなっていたところ、身体能力の極端な低下は見られないが認知機能が低下していた人の割合が一定数あったため、バーセルインデックスも低下していたということがわかったことがあります。結果、今後は認知機能の維持・改善を目的としたメニューも増やそうという、改善をおこなうことができました。

                          この様に、ご利用者の状態に合わせて、サービス内容をアップデートしていく必要があります。その際に定期測定している項目が役に立ってくるでしょう。