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~薬剤師がおさえておきたいサプリメント事情~ 第4回 「健康食品と医薬品の相互作用(1)医薬品食品相互作用とは」

2022.10.11

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■健康食品と医薬品相互作用が今なぜ注目されるのか

 

 近年、個人の食生活や運動習慣、ストレス状態によってもたらされる生活習慣病の罹患者数が増加の一途をたどっています。疾病などに対するアプローチも、薬物療法ばかりでなく、食事療法や運動療法、OTCや健康食品の利用など総合的な視点からのセルフメディケーションの時代へと大きく転換しています。とくに健康食品やサプリメントの適切利用は、疾病予防の観点から、今後の医療費の削減に大きく寄与すると考えられ、高齢者の健康寿命の延伸につながるエビデンスも得られつつあります。薬物治療を受けながら健康食品・サプリメントを利用していく状況は増加していくと考えられます。

 

■医薬品食品相互作用の二つの方向性

 

 医薬品と食物・食品の相互作用について、考え方として二つの方向性があります。

第一は、同時摂取する食品の影響で医薬品の効能効果がどのように変化するかというもので、医薬品の効能効果に与える食品の影響という視点です。摂取した飲食物あるいは特定の食品(食品成分)が医薬品の効能効果に負の影響(効果の減弱)を与えると、疾病の増悪につながり、正の影響を与えると、薬効の増強による、いわゆる効きすぎの状態をもたらします。医薬品の主作用への影響ばかりでなく、医薬品の副作用にも影響するので、思わぬ副作用の出現や副作用の増強や減弱といった影響も出ることがあります。

 第二は、栄養素の利用や代謝に医薬品が影響を与えるというものです。医薬品の投与により、味覚や食欲、嚥下咀嚼、栄養素の消化吸収や体内利用が影響されるという視点では、いくつかの事例が判明したという段階でやっと研究が始まったという状況です。日常の栄養補給の面で高齢者の場合、サルコペニア、フレイルの問題に直接かかわってきますし、経腸栄養などでもその影響が無視できなく、QOLの向上や維持に影響する問題として、今後力を入れて解明していかなければならない問題です。

 

■医薬品の効能効果に及ぼす食品の影響

 

 食品が医薬品の効果に影響を与える場合の相互作用については、その作用メカニズムの違いから二つのカテゴリーに分けられます。一つは、薬の吸収、分布、代謝、排泄過程で起こる相互作用で、薬物動態学的相互作用と呼ばれるものです。①食事の有無や特定の食事によって薬物の吸収量や吸収パターンが変化する、②食品中の特定成分が薬物の代謝に影響を与える、③栄養状態の変化によって薬の体内分布が変化する、などがこれに該当します。

①の事例では、抗悪性腫瘍薬エルロチニブの場合、脂質の多い食事や食品(牛乳やバターなど)摂取後の服用で生物効力(AUC)が2倍以上に上昇することや、では、フルーツジュースの同時摂取により、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の血中濃度が上昇し、効きすぎ状態になり、めまいやふらつきなど低血圧症状を呈してしまう事例が該当します。カルシウム拮抗薬では、小腸粘膜上の薬物代謝酵素(CYP3A4)の活性をグレープフルーツジュースに含まれる成分のフラノクマリン類が阻害してしまうためであることがわかっています。では、低栄養状態では血中たんぱく質濃度が低下することによる遊離薬物濃度の上昇と、肝薬物解毒代謝活性の低下により、薬効の増強を招きやすいことなどが挙げられます。

もう一つは、薬の効き方や効き目が発現する過程で起こる相互作用で、薬力学的相互作用と呼ばれています。メカニズム的には薬物と食品成分の拮抗作用によってもたらされる相互作用です。

例としては、ビタミンKあるいはビタミンKを多く含む食品(納豆やブロッコリー、モロヘイヤなどの緑色野菜、クロレラなどの健康食品など)の摂取による抗血栓薬ワルファリンの効果の減弱例があります。これは、本来ワルファリンの作用は、ビタミンKの血液凝固における補酵素としての働きを阻害することに起因しているために起こる現象です。

(筆者)城西大学薬学部教授 一般社団法人日本健康食品サプリメント情報センター(Jahfic) 理事 和田政裕